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根拠は、消費者に十分な質のサービスを供給できなかったことに対する賠償である。
この場合の払戻しは企業の負担であるのに対して、混雑という現象によって、同じように十分な質のサービスが供給できなかった場合に、なぜ消費者が高い費用を負担しなければならないのだろうか。
この現象も、コースの定理を用いて考えることができる。
コースの定理では、さまざまな権利や責任を売買することによって、最も効率的な資源配分が実現できる。
これまで市場で売買されなかった権利や責任といったものを自由に取引することによって、効率的な資源配分が実現される。
コースの定理では、誰に責任を課しても、自由な取引が認められれば、効率的な資源配分が実現される。
ここで、混雑税を供給者に負担させる場合を考えてみよう。
混雑によって、高速道路で一定の距離を走行する時間が予想以上にかかった場合、高速道路公団がその遅延に対する賠償金を支払うとしよう。
すると、道路サービスの供給者はどのように対応するだろうか。
混雑を解消するには二通りの方法がある。
一つはキャパシティを増やすこと、もう一つは利用者の数を減らすことである。
道路の拡幅によるキャパシティの増大は、短期的には不可能である。
このとき、消費者の数を減らすことが必要である。
消費者の数を減らすためには、道路公団がお金を払って、利用者に高速道路に乗ることをあきらめてもらう必要がある。
つまり、道路利用者に一定の金額を提示して、この時間帯の道路利用をあきらめてもらうのである。
これは、オーバーブッキングの際に、アメリカの飛行機会社やホテルがよく使う手段である。
飛行機会社は、一定の率のキャンセルを予想して座席以上の予約を取っている。
実際にキャンセルが少ない場合には、オーバーブッキングが起こる。
つまり、利用者の数が座席数を超えてしまう。
このとき飛行機会社は、一部の利用者にお金を払ってサービスの利用をあきらめてもらう。
これと同じことを、道路公団がすればよい。
このようにしても、利用者の数を減らして、混雑を緩和することは原理的には可能である。
このとき利用者が負担するコストは、寸料金+乗らないときの補助金ーに等しい。
高速道路を利用しなければ、一定の補助金が得られるのに対して、それを利用する場合には、その補助金をあきらめて、さらに通行料金を払わなければならない。
最適な点では、この補助金の額は混雑料金に等しくなる。
これがコースの定理の意味である。
混雑税を利用者に負担させても、供給者に負担させても、混雑は解消されることになる。
消費者に遅れの原因があるとすると、そのとき重要なのは、それでは誰が最安価損害回避者か、という問題である。
誰にコストを負担させたときにより安い費用で一定の損害を回避できるかが重要である。
混雑料金によって消費者にコストを負担させて利用をあきらめてもらう方法と、右のように、供給者が利用者にお金を払ってその利用をあきらめてもらう方法では、どちらが安上がりだろうか。
混雑が発生したときに、すべての利用者に対して一定の金額を提示して、一部の利用者にその時間帯での利用をあきらめてもらう方法は、非常にコストがかかる。
これは、実際にJの特急や急行が遅れたときに生じる払戻窓口の混乱を見れば、容易に理解できる。
これを毎日、朝夕のラッシュ時に実施するのは不可能である。
厳密にいえば、補助金(H払戻金)はこのサービスを利用しなかった潜在的利用者全員に支払われる必要がある。
しかしこれは、まったく不可能である。
この意味で、消費者に混雑料金を負担させるほうがより効率的であろう。
これに対して、Jの特急の遅れによって、一定の質のサービスが確保できない場合の対策として、従来の方法とは違った方法を考えてみよう。
電車の遅れの原因は消費者にあるとして、消費者にその負担義務を負わせることにしてみよう。
そのとき事故が起きないように、Jの利用者たちが、機械の検査士や整備士を雇って電車のサービスの質をチェックする必要がある||これがいかに荒唐無稽かは、直観的に明らかである。
もちろん、これによって原理的には一定の質を保つことが可能であるが、そのときのコストは、J側が事故の責任を負う場合よりもはるかに高くなる。
つまり、このときの最安価損害回避者はJだといえる。
すなわち事故による遅れを引き起こさないように努力するためのコストは、供給者側が負担したほうが安上がりといえる。
したがって、Jの遅れによる損害賠償責任は供給者に求めるのが合理的であるのに対し、混雑による質の低下は消費者によって負担されるべきである。
これが、混雑料金を利用者に課す理由である。
それでは、実際に支払われなければならない混雑料金はいったい、筆者たちは、鉄道混雑が利用者一人一人にどのような不効用を及ぼしているかについて推定した。
いくらになるのだろうか。
この推定作業を簡単に説明しよう。
人々が自由に住所を選択するとき、通勤時間によって失われる自分たちの余暇時間は、家賃や地価に反映されるはずである。
より郊外から都心に通う人が支払っている家賃や地価は、都心に近いところから通勤する人が支払っている家賃や地価よりも低いはずである。
いい換えると、郊外のほうが地価が低いのは、このような通勤時間や都心までの輸送費用がかかることを意味している。
つまり、郊外のほうが通勤に不便な分だけ、地価は安くなる。
同じように、毎日の通勤から受ける疲労感や不快感は、混雑率や通勤時間に比例するはずである。
したがって、このような心理的費用や不効用も家賃や地価に反映することになる。
この関係に注目して、郊外に行くにしたがって生じる地価の低下分のなかから、通勤者が負担している費用を、回帰分析を用いて抽出することによって、鉄道サービスの混雑現象による社会的費用を実証的に推定することができる。
つまり、ある駅から徒歩圏にある住宅地の地価と、より郊外の駅にある住宅地の地価との差のどの部分が、混雑という要因によって生じているかを分析する。
このようにして、もう一人閉じ車輔に通勤者が増えたときに、どの程度不効用が発生するかを利用者全員について合計する。
実際に首都圏の鉄道を対象として、社会的費用を計測し、その混雑解消のための最適運賃を計測した。
その試算によれば、中央線のピーク時の最適混雑料金は現状の料金の3〜5倍であることが判明した。
筆者たちは同じように、首都高速道路を対象に道路交通の混雑費用を試算した。
自動車の混雑費用の算出は、需要関数と速度関数を直接推計して、混雑費用を計算する。
まず高速道路の通過自動車台数は高速道路の混雑率に依存すると考えて、速度がどのように決定するかについて推定する。
次に、首都高の需要関数を推定する。
自動車が一台増えることによって、速度がどの程度低下し、その結果、高速道路の利用者がどの程度変化するかについて推定する。
速度が遅くなれば、サービスの質が低下することにより、高速道路の利用者も減るはずである。
そのとき全利用者がこうむる速度の低下分を金額で評価していくらになるかを求めれば、社会的費用が求められる。
その試算によれば、首都高における混雑料金は約3OO円程度(平均走行距離17回当たり)となっている。
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